【書評】苦しみの手放し方(大愚元勝)

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本書を読むまでの経緯

以前Youtubeを観ていて偶然知ったチャンネル、大愚和尚の一問一答。仏教の観点からいろいろな悩みに答える動画。まだ若そうだが、落ち着いた声で心優しく、時にズバッと、本質的な回答をされる。回答は腑に落ちることもあれば、仏教の考え方が自分には難しすぎてよくわからないこともあったが、それから頻繁に観ていた(当時自分も悩みを抱えていたのか?)。あるとき本を出版されたので、即購入。しかし、(自分の悩みが消えたのか?)読まずに本棚に埋もれていた。本棚の整理をしていたら発掘され、早速読んでみた。

本書の構成と要点

本書の章の構成および要点は以下のとおりである。各章ごとにさらに小見出しが存在し(公式サイト)、現代の悩み別にお釈迦様/大愚和尚のありがたい言葉が示されている。よって、興味のある章から読み始めることが可能。小見出しごとに、辞書的に参照することも可能なので、何か悩みが生じたときに該当する箇所のみ参照するという使い方が良いかもしれない。

第1章:人間関係に苦しまない考え方

  • 本当の友達は孤独の中からつくられる
    孤独を感じているならば、それはチャンス。孤独を受け入れた時、人間は、本来の自分自身を感じることができる。孤独だからこそ他人に振り回されたり、誰かに愚痴ったり、頼ったりすることもなく、自尊心をはぐくむことができる。

第2章:仕事の悩みとどう向き合えばいいのか

  • 他人のしたこと、としなかったことを見るな。自分のしたことと、しなかったことだけを見よ
    同僚よりも自分のほうが仕事をしているのに、評価が同じであれば不公平感を覚える。仏教では他人に気を取られ、自分をおろそかにすることを戒めている。大切なのは、他人の評価を気にせず、自分の心の状態を省みることが大切(他人の評価は状況によって風見鶏のように変わる)。人のことをとやかく言うのではなく、「ただ自分がどうであるか」を冷静に観察することで、他社との比較から生じる妬みや劣等感から逃げることができる
  • 初心を忘れないで、人知れず努力する。それが仕事の本分である
    人間の評価は、他人の見ていないところでの行動で決まる。他人の評価に一喜一憂するのではなく、自分の信条や本心に従って、愚直に生きる。自分が望む未来は、その先にしかない。

第3章:お金に惑わされない考え方

  • 貧しさから逃げたければ、人のために惜しみなく与える
    仏教では、「自分の収入に見合った等身大の生活をする」「困っている人がいれば、人のためにお金を使う」ことによって、富の循環が生まれると考えている。先に他人に与えるから、相手からも与えられる。
  • 正しいお金の使い方
    しっかり働いて拓さんお金を稼ぐ。そして、自分にも他人にもお金を使って、正しく循環させる。仏教は経済活動を肯定している。

第4章:病気と健康をどうとらえたらいいのか

  • 使命感を持って毎日を生きることが健康長寿の秘訣
    仏教では「地域や家庭の中で、自分の役割を持つこと」が、健康長寿の秘訣であると考えられている。お金が発生せずとも、ボランティアでも、自分にしかできない世の中の役に立つ重要な仕事であると思うのであれば、積極的に行うべき。

第5章:子どもや家族の悩みとどう向き合えばいいのか

  • 自分でさえ自分のものではないのに、どうして子が自分のものであろうか
    世の中の物事は、常に変化を繰り返し、同じ状態のものは何一つない。それが仏教の教える「諸行無常」。自分の財産も子供も、すべてが無常であり、変化していく。「お金持ちでありたい」、「子供はこのように育つべき」という、思い通りにならないものにたいして、「こうあってほしい」と思い悩み、執着することが、あらゆる苦しみの根源となっている。
  • 1万以上の家庭をみてわかった、繫栄する家に共通する2つのこと
    「家のしきたりが受け継がれていること」と「お墓参りや先祖供養を大切にしていること」。

第6章:恋愛や結婚の悩みとどう向きあえばいいのか

  • 仏教が教えるイイ男とイイ女の定義
    他社に迎合して考えを変えることはなく、相手が誰であれ、正しさを主張する男性がイイ男。不快愛と母性を発揮して、分け隔てなく包み込む女性がイイ女。

第7章:悩み、イライラ、ストレス、悲しみから逃れる

  • 過去は追うな。未来を願うな。過去はすでに捨てられ、未来はまだ来ない。ただ今日すべきことを熱心になせ
    今この一瞬を一生懸命に生きることで、悔いのない人生を送ることができる。過去を思い惑ったり、未来におびえたりするのは、今この瞬間を生きていない(大迦旃延一夜賢者経「一夜賢者の偈」)。「自分の命は今しかない」とあきらめて、「今」をおろそかにせずに生きる。

感想

この手の、有名な方や宗教を極められた方のありがたいお言葉が掲載されている本は、読んだときは「なるほどなぁ」と感じるものの、時がたつにつれてその効果も薄れていくことが多いような気がする。しかし、本書で紹介されている「一夜賢者の偈」はとても腑に落ちた。きっと年齢的なものもあるのかもしれないが、やりたいことは仕事もプライベートも「今」やらねばという気持ちが年々強まっているような気がする。まさに「明日やろうはバカヤロー」である。

書籍情報

書籍名:苦しみの手放し方
著者:大愚元勝
出版社 ‏ : ‎ ダイヤモンド社
発行年月:2020年02月

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